こまい歯科の小泉です。
先週の佐藤先生に引き続き、
見えない部分の治療シリーズ第2弾です。
今回は、私が治療した1つのケースを通して
お話しさせていただこうと思います。
図1 左下の奥歯2本に問題あり
この方は、左下の奥歯のうち、1本は古いセラミック冠が、
一番奥はアマルガムという銀が詰めてありましたが、
違和感がする、ということでレントゲンを撮影したところ、
冠の歯は根の先に膿がたまってるようでした。銀の入った歯は
むし歯が見つかりました。
図2 まず奥から2番目の冠を外し、根の治療と同時に仮歯を入れました。
図3 次に、根の治療を終えた歯にファイバーコアという土台を接着、
そして一番奥の歯のむし歯を除去したところです。
図4 ここで今日のテーマですが、患者さんからは見えない所がこの
写真の部分です。
ここで見ていただきたいのは、歯と歯肉の境目部分です。
歯が滑らかではっきりとした曲線で削ってあるのが見えますね。
実は我々専門家にとって技術の上手下手を判断できるわかりやすい
指標の1つがこの「支台歯形成」そして「マージンライン」です。
簡単にいえば、「支台歯形成」とは歯を規格通りに削ること、
「マージンライン」は削った部分と削っていない部分の境目のことで、
これがいかに滑らかで綺麗かが、その後の治療の成否に大きく影響します。
歯科医師の技術の見せ処ですから相当に気を使います。
実際、私の修業時代において、この技術の習得には膨大な時間を
かけました。
作業精度は20~50μm(0.02~0.05mm)の世界ですから
当たり前ですね。
歯科医師9年目を迎えた今ではすっかり慣れた技術ですが、
この場面になると今でもとりわけ神経を集中させています。
今みなさんはネットで写真を見ていますが、口の中はもっと暗く、そして
こんなにはっきりとは見えませんし、ここまで細部をチェックすることも
「肉眼」では不可能です。
なぜなら、肉眼では、条件が良くても0.1mm、通常は0.2mm
(100~200μm)レベルが限界です。
拡大鏡と肉眼とでは精度がいかに違うかがお分かりかと思います。
唾液や水ですぐに歯の表面が反射したり光が屈折して見えづらかったり、
照明の光が届かなくて、よく見えないことも起こります。
なにより、患者さんがずっと口を開け続けていることも大変ですから、
手際良くもなければならず、じーーっと見ている時間を確保するのも
一苦労です。
参考までに、写真の大きさは、私が愛用しているサージテル社の5倍の拡大鏡を通してのものとだいたい同じレベル、とお考えください。
図5 印象(歯の型取り)
この方は歯を白くしたいということで、ジルコニアクラウンと
高度強化型セラミックインレーを製作することになりました。
セラミック治療はとりわけ精密さが要求されるので、シリコン印象剤を
用いました。
図6 印象部分の拡大:歯の全周にわたって印象剤が流れている。
これにより、歯科技工士さんも精密な仕事が可能となる。
(これも見えない部分ですが、重要な仕事です)
図7 印象部分をさらに拡大:境界が1本のラインで綺麗につながっている
のが確認できる。
油断すると印象剤に気泡が入り、穴があいてしまったり、面が荒れて
しまいます。
そうなっては、歯科技工士さんがきれいに冠や詰め物を作製することが
できなくなります。
この点も患者さんからは「見えない部分」ですが、治療において
重要なポイントの1つです。
図8 完成
ついに完成しました!
冠と詰め物を精密に作ってくださる優秀な歯科技工士さんと、
アシスタントの歯科助手さんとのコラボのたまものです。
そして何より、患者さんが一番頑張って治療を受けてくださったと思います!
治療前の違和感は無事解決し、納得のいく仕事ができました。
以前よりも噛みやすくなり、見た目もきれいになって嬉しい!、と
喜んでおられました!
この瞬間、この言葉、そして患者さんの嬉しそうな顔が、
歯科医師人生で一番嬉しく感じる時間の1つです。
こまい歯科では、見えない所であっても大切にしながら、
みなさんの幸せにつながるような仕事をこれからも
し続けていこうと思っております。